はじめに
Excelには様々な統計関数が用意されていますが、FISHERINV関数は、フィッシャー変換された値(z値)から元の相関係数を求める際に役立ちます。フィッシャー変換は、相関係数を正規分布に近づけるための変換であり、その逆変換は元の相関係数に戻すために使用されます。この記事では、FISHERINV関数の基本的な使い方から、画像にある例、そしてExcelのバージョン情報までを詳しく解説します。
フィッシャー変換と逆変換とは?
フィッシャー変換(またはフィッシャーのz変換)は、相関係数 r を以下の式で変換する手法です。
z = 0.5 * ln((1 + r) / (1 - r))
ここで、ln は自然対数です。この変換により、相関係数 r(-1から1の間の値を取る)はほぼ正規分布に従う z 値に変換され、統計的な扱いが容易になります。
FISHERINV関数はこの変換の逆を行います。つまり、z 値から元の相関係数 r を求めます。逆変換の式は以下の通りです。
r = (exp(2 * z) - 1) / (exp(2 * z) + 1)
または、双曲線正接関数tanhを用いて以下のように表すこともできます。
r = tanh(z)
FISHERINV関数とは?
FISHERINV関数は、Excelでフィッシャー変換の逆変換を行うための関数です。
基本的な構文
Excel
=FISHERINV(z)
各引数の意味は以下の通りです。
- z(必須): 変換前のフィッシャー変換された値を指定します。
Excelバージョン情報:FISHERINV
FISHERINV関数は、Excel 2007で導入されました。それ以前のバージョンでは、この関数は提供されていませんでした。
画像例の解説
画像では、以下の設定でFISHERINV関数を使用しています。
- フィッシャー変換値 (z): セルA2に0.2が入力されています。
- 数式: セルB2には以下の数式が入力されています。
Excel
=FISHERINV(A2)
この数式を分解して解説します。
- A2: フィッシャー変換値(0.2)を指定しています。
数式の動作
この数式は、フィッシャー変換値0.2を逆変換します。結果として、セルB2には0.19737532…(約0.1974)と表示されています。これは、フィッシャー変換値が0.2である元の相関係数が約0.1974であることを意味します。
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FISHER関数(正変換)との関係
FISHER関数は、相関係数からフィッシャー変換値を求める関数です。FISHERINV関数はこの逆の操作を行います。
例えば、セルB2に0.1974と入力されている場合、セルC2に以下の数式を入力すると、元のフィッシャー変換値約0.2が求められます。
Excel
=FISHER(B2)
フィッシャー変換と逆変換の応用例
フィッシャー変換とその逆変換は、以下の場面で役立ちます。
- 相関係数の検定: 2つの相関係数の間に有意な差があるかどうかを検定する場合、各相関係数をフィッシャー変換してから検定を行うことで、より正確な結果が得られます。検定後、FISHERINV関数で元の相関係数に戻して解釈します。
- 相関係数の信頼区間の計算: 相関係数の信頼区間を計算する場合、フィッシャー変換後の値で信頼区間を計算し、その後FISHERINV関数で元の相関係数に戻すことで、より正確な信頼区間が得られます。
FISHERINV関数の注意点
- 引数 z は数値でなければなりません。
- 引数に数値以外の値を指定すると、エラー値 #VALUE! が返されます。
まとめ
FISHERINV関数は、フィッシャー変換された値から元の相関係数を求める際に非常に便利な関数です。相関係数の検定や信頼区間の計算などで使用されます。Excel 2007以降を使用している場合は、FISHER関数と組み合わせて活用することで、より高度な統計分析を行うことができます。
この解説で、FISHERINV関数について、より深く理解できたかと思います。この情報を活用し、Excelでのデータ分析をより効率的に行いましょう。
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