はじめに
Excelには様々な統計関数が用意されていますが、F.INV関数は、F分布に基づいて左側確率（累積確率）から対応するF値を計算する際に役立ちます。F分布は、分散分析（ANOVA）や2つの分散の比の検定などで使用されます。この記事では、F.INV関数の基本的な使い方から、画像にある例、そしてExcelのバージョン情報までを詳しく解説します。
F分布とは？
F分布は、2つのカイ二乗分布に従う確率変数の比によって定義される連続確率分布です。分散分析などで、2つの群の分散の比を検定する際に用いられます。F分布は、2つの自由度（分子の自由度と分母の自由度）によって形状が変化します。
F.INV関数とは？
F.INV関数は、F分布における左側確率（累積確率）に対応するF値を返します。これは、「あるF値x以下の確率が指定した確率になるようなxの値」を求める関数です。
基本的な構文
Excel
=F.INV(確率, 自由度1, 自由度2)
各引数の意味は以下の通りです。
- 確率（必須）: 求めたい左側確率（累積確率）を指定します。0から1の間の数値を指定します。
- 自由度1（必須）: 分子の自由度を指定します。正の整数である必要があります。
- 自由度2（必須）: 分母の自由度を指定します。正の整数である必要があります。
Excelバージョン情報：F.INV
F.INV関数は、Excel 2010で導入されました。それ以前のバージョンでは、FINV関数を使っていました。FINV関数は右側確率からF値を求める関数でしたが、Excel 2010以降ではF.INV.RT関数として独立しました。F.INV関数は左側確率からF値を求める関数として新たに導入され、より使いやすくなりました。FINV関数は互換性のために残されていますが、新しいバージョンではF.INVまたはF.INV.RTを使用することを推奨します。
画像例の解説
画像では、以下の設定でF.INV関数を使用しています。
- 左側確率: セルA2に0.2が入力されています。
- 自由度1: セルB2に10が入力されています。
- 自由度2: セルC2に20が入力されています。
- 数式: セルD2には以下の数式が入力されています。
Excel
=F.INV(A2,B2,C2)
この数式を分解して解説します。
- A2: 左側確率（0.2）を指定しています。
- B2: 分子の自由度（10）を指定しています。
- C2: 分母の自由度（20）を指定しています。
数式の動作
この数式は、「分子の自由度が10、分母の自由度が20のF分布において、あるF値x以下の確率が0.2になるようなxの値」を計算します。結果として、セルD2には0.589…（約0.59）と表示されています。これは、自由度(10, 20)のF分布において、0.59以下の値を取る確率が約20%であることを意味します。
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F.INV.RT関数（右側確率からF値を求める）
F分布の右側確率（あるF値xより大きい確率）からF値を求めるには、F.INV.RT関数を使用します。
基本的な構文
Excel
=F.INV.RT(確率, 自由度1, 自由度2)
これは、F.INV(1-確率, 自由度1, 自由度2)と同じ結果になります。
FINV関数（古いバージョン）
Excelの古いバージョン（Excel 2007以前など）では、FINV関数を使用していました。FINV関数はF分布の右側確率からF値を返す関数です。
Excel
=FINV(確率, 自由度1, 自由度2)
例：分散分析における有意水準の確認
分散分析の結果、F値が3.0になったとします。分子の自由度が5、分母の自由度が20の場合、有意水準5%で帰無仮説を棄却できるかどうかを確認します。
まず、右側確率を求めます。
Excel
=F.DIST.RT(3.0,5,20)
この結果が約0.027となります。これは、F値が3.0以上になる確率が約2.7%であることを意味します。この値は有意水準5%よりも小さいため、帰無仮説を棄却し、群間に有意な差があると結論付けられます。
逆に、F値に対応する左側確率からF値を求める場合は、F.INV関数を使用します。例えば、左側確率が0.95の場合、
Excel
=F.INV(0.95,5,20)
と入力することで、有意水準5%に対応するF値（この場合は約3.18）を得ることができます。
F.INV関数の注意点
- 確率は0より大きく1より小さい数値でなければなりません。
- 自由度1と自由度2は正の整数でなければなりません。
- 引数に数値以外の値を指定すると、エラー値 #VALUE! が返されます。
- 確率が0以下または1以上の場合、エラー値 #NUM! が返されます。
- 自由度1または自由度2が1未満の場合、エラー値 #NUM! が返されます。
まとめ
F.INV関数は、F分布における左側確率から対応するF値を簡単に計算できる非常に便利な関数です。分散分析などで頻繁に使用されます。最新のExcelを使用している場合は、F.INV関数とF.INV.RT関数を使用し、古いバージョンを使用している場合はFINV関数を使用することを覚えておきましょう。
この解説で、F.INV関数について、より深く理解できたかと思います。この情報を活用し、Excelでのデータ分析をより効率的に行いましょう。
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