494|Excel F.DIST.RT関数とFDIST関数:F分布の右側確率を計算

目次

はじめに

Excelには様々な統計関数が用意されていますが、F.DIST.RT関数は、F分布に基づいて右側確率(あるF値より大きい確率)を計算する際に役立ちます。F分布は、分散分析(ANOVA)や2つの分散の比の検定などで使用されます。この記事では、F.DIST.RT関数の基本的な使い方から、画像にある例、そしてExcelのバージョン情報、さらに旧バージョンのFDIST関数についても詳しく解説します。

F分布とは?

F分布は、2つのカイ二乗分布に従う確率変数の比によって定義される連続確率分布です。分散分析などで、2つの群の分散の比を検定する際に用いられます。F分布は、2つの自由度(分子の自由度と分母の自由度)によって形状が変化します。

F.DIST.RT関数とは?

F.DIST.RT関数は、F分布における右側確率(あるF値より大きい確率)を返します。

基本的な構文

Excel

=F.DIST.RT(x, 自由度1, 自由度2)

各引数の意味は以下の通りです。

  • x(必須): F分布における値を指定します(F値)。
  • 自由度1(必須): 分子の自由度を指定します。正の整数である必要があります。
  • 自由度2(必須): 分母の自由度を指定します。正の整数である必要があります。

Excelバージョン情報:F.DIST.RTとFDIST

F.DIST.RT関数は、Excel 2010で導入されました。それ以前のバージョンでは、FDIST関数を使用していました。FDIST関数はF分布の右側確率を返す関数で、F.DIST.RT関数と全く同じです。F.DIST関数(左側確率を返す関数)と区別するために、Excel 2010以降ではF.DIST.RTという名称になりました。FDIST関数は互換性のために残されていますが、新しいバージョンではF.DIST.RTを使用することを推奨します。

画像例の解説

画像では、以下の設定でF.DIST.RT関数を使用しています。

  • F値 (x): セルA2に2が入力されています。
  • 自由度1: セルB2に10が入力されています。
  • 自由度2: セルC2に20が入力されています。
  • 数式: セルD2には以下の数式が入力されています。

Excel

=F.DIST.RT(A2,B2,C2)

この数式を分解して解説します。

  1. A2: F値(2)を指定しています。
  2. B2: 分子の自由度(10)を指定しています。
  3. C2: 分母の自由度(20)を指定しています。

数式の動作

この数式は、「分子の自由度が10、分母の自由度が20のF分布において、F値が2より大きい確率」を計算します。結果として、セルD2には0.0917…(約0.09)と表示されています。これは、F値が2より大きい値を取る確率が約9%であることを意味します。

Excelサンプルデータのダウンロード

上記画像のエクセルサンプルデータを、以下のリンクからダウンロードし、練習用として活用ください。

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FDIST関数(古いバージョン)

Excelの古いバージョン(Excel 2007以前など)では、FDIST関数を使用していました。FDIST関数の構文は以下の通りです。

Excel

=FDIST(x, 自由度1, 自由度2)

引数の意味はF.DIST.RT関数と全く同じです。

F.DIST関数(左側確率)との関係

F.DIST関数は、F分布の左側確率(あるF値x以下の確率)を返す関数です。F.DIST.RT関数(右側確率)とF.DIST関数(左側確率)の間には以下の関係があります。

F.DIST.RT(x, 自由度1, 自由度2) = 1 - F.DIST(x, 自由度1, 自由度2, TRUE)

つまり、右側確率は1から左側確率を引いた値になります。

例:分散分析

例えば、3つの異なる教育方法(A、B、C)の効果を比較するために、それぞれの方法で教育を受けた生徒のテスト結果を分析するとします。各群のサンプルサイズはそれぞれ10、12、15です。分散分析の結果、群間平方和を群内平方和で割ったF値が3.5になったとします。この場合、群間に有意な差があるかどうかを検定するために、F分布の右側確率を求めます。

分子の自由度は群の数-1なので、3-1=2です。分母の自由度は全サンプルサイズ-群の数なので、10+12+15-3=34です。

ExcelでF.DIST.RT関数を使用すると、

Excel

=F.DIST.RT(3.5,2,34)

と入力します。この結果がp値となり、事前に設定した有意水準(例えば5%)と比較することで、群間に有意な差があるかどうかを判断します。

F.DIST.RT関数の注意点

  • x、自由度1、自由度2は数値でなければなりません。
  • 自由度1と自由度2は正の整数でなければなりません。
  • xが負の値の場合、エラー値 #NUM! が返されます。
  • 自由度1または自由度2が1未満の場合、エラー値 #NUM! が返されます。

まとめ

F.DIST.RT関数は、F分布における右側確率を計算する際に非常に役立つ関数です。分散分析などで頻繁に使用されます。最新のExcelを使用している場合は、F.DIST.RT関数を使用し、古いバージョンを使用している場合はFDIST関数を使用することを覚えておきましょう。また、左側確率を求める場合はF.DIST関数を使用します。

この解説で、F.DIST.RT関数とFDIST関数について、より深く理解できたかと思います。この情報を活用し、Excelでのデータ分析をより効率的に行いましょう。

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