488|Excel TDIST関数:t分布の片側・両側確率を計算

目次

はじめに

Excelには様々な統計関数が用意されていますが、TDIST関数は、t分布に基づいて片側確率または両側確率を計算する際に役立ちます。t分布は、母集団の標準偏差が未知の場合に、標本平均の分布を推定するために使用され、特に小標本の場合に重要です。この記事では、TDIST関数の基本的な使い方から、画像にある例、そしてExcelのバージョン情報までを詳しく解説します。

t分布とは?

t分布は、正規分布に似た左右対称の分布ですが、正規分布よりも裾が重い(裾が広くなっている)という特徴があります。これは、母集団の標準偏差が未知であるために生じる不確実性を反映しています。t分布は、自由度と呼ばれるパラメータによって形状が変化し、自由度が大きくなるにつれて正規分布に近づいていきます。

TDIST関数とは?

TDIST関数は、t分布における片側確率または両側確率を返します。

基本的な構文

Excel

=TDIST(x, 自由度, 尾部)

各引数の意味は以下の通りです。

  • x(必須): t分布における値を指定します(t値)。正の値である必要があります。
  • 自由度(必須): 分布の自由度を指定します。正の整数である必要があります。
  • 尾部(必須):
    • 1:片側確率(右側確率)
    • 2:両側確率

Excelバージョン情報:TDIST

TDIST関数は、Excelの古いバージョンから存在しています。Excel 2010以降では、より明確な関数としてT.DIST、T.DIST.RT、T.DIST.2Tが追加されました。TDIST関数は互換性のために残されていますが、新しいバージョンではT.DIST.RT(右側確率)、T.DIST.2T(両側確率)、必要に応じてT.DIST(x, 自由度, TRUE) (左側確率)を使用することを推奨します。

画像例の解説

画像では、以下の設定でTDIST関数を使用しています。

  • t値 (x): セルA2に2が入力されています。
  • 自由度: セルB2に10が入力されています。
  • 尾部: 1が指定されています。
  • 数式: セルC2には以下の数式が入力されています。

Excel

=TDIST(A2,B2,1)

この数式を分解して解説します。

  1. A2: t値(2)を指定しています。
  2. B2: 自由度(10)を指定しています。
  3. 1: 片側確率(右側確率)を使用することを指定しています。つまり、t値が2より大きい確率を計算します。

数式の動作

この数式は、「自由度が10のt分布において、t値が2より大きい確率」を計算します。結果として、セルC2には0.036…(約0.04)と表示されています。これは、t値が2より大きい値を取る確率が約4%であることを意味します。

Excelサンプルデータのダウンロード

上記画像のエクセルサンプルデータを、以下のリンクからダウンロードし、練習用として活用ください。

【Excel】練習用サンプルデータ(例題)をダウンロード(無料)

片側確率(左側確率)を求める場合

TDIST関数で左側確率を直接求めることはできません。左側確率を求めるには、以下の式を使用します。

Excel

=1-TDIST(x, 自由度, 1)

または

Excel

=T.DIST(x, 自由度, TRUE)

両側確率を求める場合

両側確率を求める場合は、尾部に2を指定します。

Excel

=TDIST(x, 自由度, 2)

または

Excel

=T.DIST.2T(x, 自由度)

例:t検定におけるp値の計算

例えば、ある製品の平均重量が100gであると主張されています。10個の製品を無作為に抽出し、重量を測定した結果、標本平均は105g、標本標準偏差は5gでした。この主張を片側t検定で検証する場合、t値を計算し、TDIST関数でp値を求めます。

t値の計算式は以下の通りです。

t = (標本平均 – 母集団の平均) / (標本標準偏差 / √標本サイズ)

この例では、

t = (105 – 100) / (5 / √10) ≈ 3.16

自由度は標本サイズ-1なので、10-1=9です。

p値を求めるには、

Excel

=TDIST(3.16,9,1)

と計算します。

TDIST関数の注意点

  • xは正の数値でなければなりません。負のt値を使用する場合は、絶対値を取ってから計算し、必要に応じて結果を調整する必要があります。
  • 自由度は正の整数でなければなりません。
  • 自由度が1未満の場合、エラー値 #NUM! が返されます。

まとめ

TDIST関数は、t分布における片側確率または両側確率を計算する際に役立つ関数です。t検定などで頻繁に使用されます。しかし、Excel 2010以降では、より明確なT.DIST.RT、T.DIST.2T、T.DIST関数が提供されているため、これらの関数の使用を推奨します。TDIST関数は古いバージョンとの互換性を保つために残されています。

この解説で、TDIST関数について、より深く理解できたかと思います。この情報を活用し、Excelでのデータ分析をより効率的に行いましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次