485|Excel T.DIST関数:t分布の確率と累積確率を計算

目次

はじめに

Excelには様々な統計関数が用意されていますが、T.DIST関数は、t分布に基づいて確率密度関数(PDF)または累積分布関数(CDF)の値を計算する際に役立ちます。t分布は、母集団の標準偏差が未知の場合に、標本平均の分布を推定するために使用され、特に小標本の場合に重要です。この記事では、T.DIST関数の基本的な使い方から、画像にある例、そしてExcelのバージョン情報までを詳しく解説します。

t分布とは?

t分布は、正規分布に似た左右対称の分布ですが、正規分布よりも裾が重い(裾が広くなっている)という特徴があります。これは、母集団の標準偏差が未知であるために生じる不確実性を反映しています。t分布は、自由度と呼ばれるパラメータによって形状が変化し、自由度が大きくなるにつれて正規分布に近づいていきます。

T.DIST関数とは?

T.DIST関数は、t分布における累積分布関数(CDF、左側確率)または確率密度関数(PDF)の値を返します。累積分布関数とは、「ある値x以下の確率」を表す関数です。

基本的な構文

Excel

=T.DIST(x, 自由度, 関数形式)

各引数の意味は以下の通りです。

  • x(必須): t分布における値を指定します(t値)。
  • 自由度(必須): 分布の自由度を指定します。正の整数である必要があります。
  • 関数形式(必須):
    • TRUE:累積分布関数(指定された値以下の確率、左側確率)
    • FALSE:確率密度関数(指定された値の確率密度)

Excelバージョン情報:T.DIST

T.DIST関数は、Excel 2010で導入されました。それ以前のバージョンでは、TDIST関数を使ってt分布の片側確率または両側確率を求めていました。Excel 2010以降では、片側確率を求めるためにT.DIST.RT関数、両側確率を求めるためにT.DIST.2T関数が追加されました。TDIST関数は互換性のために残されていますが、新しいバージョンではT.DIST、T.DIST.RT、T.DIST.2Tを使用することを推奨します。

画像例の解説

画像では、以下の設定でT.DIST関数を使用しています。

  • t値 (x): セルA2に2が入力されています。
  • 自由度: セルB2に10が入力されています。
  • 関数形式: TRUEが指定されています。
  • 数式: セルC2には以下の数式が入力されています。

Excel

=T.DIST(A2,B2,TRUE)

この数式を分解して解説します。

  1. A2: t値(2)を指定しています。
  2. B2: 自由度(10)を指定しています。
  3. TRUE: 累積分布関数を使用することを指定しています。つまり、t値が2以下の確率を計算します。

数式の動作

この数式は、「自由度が10のt分布において、t値が2以下の確率」を計算します。結果として、セルC2には0.957…(約0.96)と表示されています。これは、t値が2以下の値を取る確率が約96%であることを意味します。

Excelサンプルデータのダウンロード

上記画像のエクセルサンプルデータを、以下のリンクからダウンロードし、練習用として活用ください。

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T.DIST.RT関数(右側確率)

t分布において、ある値より大きい確率(右側確率)を求めたい場合は、T.DIST.RT関数を使用します。

Excel

=T.DIST.RT(x, 自由度)

例えば、t値が2、自由度が10の場合の右側確率は、

Excel

=T.DIST.RT(2,10)

で計算できます。

T.DIST.2T関数(両側確率)

t分布において、ある値の絶対値より大きい確率(両側確率)を求めたい場合は、T.DIST.2T関数を使用します。

Excel

=T.DIST.2T(x, 自由度)

例えば、t値が2、自由度が10の場合の両側確率は、

Excel

=T.DIST.2T(2,10)

で計算できます。

TDIST関数(古いバージョン)

Excel 2007以前のバージョンでは、TDIST関数を使ってt分布の片側確率または両側確率を計算していました。

Excel

=TDIST(x, 自由度, 尾部)
  • 尾部 = 1:片側確率(右側確率)
  • 尾部 = 2:両側確率

左側確率を求めるには、1-TDIST(x, 自由度, 1)と計算する必要がありました。

例:t検定

例えば、ある製品の平均重量が100gであると主張されています。10個の製品を無作為に抽出し、重量を測定した結果、標本平均は105g、標本標準偏差は5gでした。この主張をt検定で検証する場合、t値を計算し、T.DIST.RT関数またはT.DIST.2T関数でp値を求めます。

T.DIST関数の注意点

  • xと自由度は数値でなければなりません。
  • 自由度は正の整数でなければなりません。
  • 自由度が1未満の場合、エラー値 #NUM! が返されます。

まとめ

T.DIST関数は、t分布における確率と累積確率を計算する際に非常に役立つ関数です。t検定などで頻繁に使用されます。最新のExcelを使用している場合は、T.DIST、T.DIST.RT、T.DIST.2T関数を使い分け、古いバージョンを使用している場合はTDIST関数を使用することを覚えておきましょう。

この解説で、T.DIST関数について、より深く理解できたかと思います。この情報を活用し、Excelでのデータ分析をより効率的に行いましょう。

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