478|Excel LOGNORM.DIST/LOGNORMDIST関数:対数正規分布における確率を計算

目次

はじめに

Excelには様々な統計関数が用意されていますが、LOGNORM.DIST関数(および以前のLOGNORMDIST関数)は、対数正規分布に基づいて確率を計算する際に役立ちます。対数正規分布は、株価の変動、生物の成長、河川流量など、正の値のみを取り、かつ歪んだ分布を示すデータに対してよく用いられます。この記事では、LOGNORM.DIST関数の基本的な使い方から、画像にある例、そしてExcelのバージョン情報までを詳しく解説します。

対数正規分布とは?

対数正規分布は、ある確率変数Xの対数(log X)が正規分布に従う場合に、Xが従う分布です。つまり、データを対数変換することで正規分布に近づけることができる場合に有用です。

対数正規分布は、2つのパラメータによって特徴付けられます。

  • μ (mu): 対数変換後のデータの平均値
  • σ (sigma): 対数変換後のデータの標準偏差

LOGNORM.DIST関数とは?

LOGNORM.DIST関数は、対数正規分布における累積分布関数(CDF)の値を返します。累積分布関数とは、「ある値x以下の確率」を表す関数です。以前のExcelバージョンではLOGNORMDIST関数が使用されていましたが、現在はLOGNORM.DISTが推奨されています。

基本的な構文

Excel

=LOGNORM.DIST(x, 平均, 標準偏差, 関数形式)

各引数の意味は以下の通りです。

  • x(必須): 対数正規分布における値を指定します。
  • 平均(必須): ln(x)の平均値を指定します(μ)。
  • 標準偏差(必須): ln(x)の標準偏差を指定します(σ)。
  • 関数形式(必須):
    • TRUE:累積分布関数(指定された値以下の確率)
    • FALSE:確率密度関数(指定された値の確率密度)

Excelバージョン情報:LOGNORM.DISTとLOGNORMDIST

  • LOGNORM.DIST: Excel 2010で導入された比較的新しい関数です。
  • LOGNORMDIST: Excelの古いバージョン(Excel 2007以前など)で使用されていた関数で、互換性のために残されています。

重要な違いは、LOGNORMDISTには「関数形式」の引数がなく、累積分布関数(CDF)のみを計算することです。LOGNORM.DISTでは、「関数形式」引数にFALSEを指定することで、確率密度関数(PDF)を計算できます。

推奨: 最新のExcelを使用している場合は、LOGNORM.DIST関数を使用することを強く推奨します。

画像例の解説

画像では、以下の設定でLOGNORM.DIST関数を使用しています。

  • 値 (x): セルA2に75が入力されています。
  • 平均 (μ): セルB2に70が入力されています。これは、ln(x)の平均値です。
  • 標準偏差 (σ): セルC2に50が入力されています。これは、ln(x)の標準偏差です。
  • 数式: セルD2には以下の数式が入力されています。

Excel

=LOGNORM.DIST(A2,B2,C2,TRUE)

この数式を分解して解説します。

  1. A2: 値(75)を指定しています。
  2. B2: ln(x)の平均(70)を指定しています。
  3. C2: ln(x)の標準偏差(50)を指定しています。
  4. TRUE: 累積分布関数を使用することを指定しています。つまり、75以下の確率を計算します。

数式の動作

この数式は、「ln(x)の平均が70、標準偏差が50の対数正規分布において、xが75以下の確率」を計算します。結果として、セルD2には0.09448…と表示されています。これは、75以下の値を取る確率が約9.4%であることを意味します。

重要な注意点: 画像では「75点以上の人の割合」と書かれていますが、上記の計算では「75点以下の人の割合」を求めています。75点以上の割合を求める場合は、以下のように計算する必要があります。

Excel

=1-LOGNORM.DIST(A2,B2,C2,TRUE)

Excelサンプルデータのダウンロード

上記画像のエクセルサンプルデータを、以下のリンクからダウンロードし、練習用として活用ください。

【Excel】練習用サンプルデータ(例題)をダウンロード(無料)

例:株価の変動

例えば、ある株の価格が対数正規分布に従うとします。現在の株価が100で、ln(株価)の平均が4.6、標準偏差が0.2だとします。このとき、株価が110以下になる確率は、=LOGNORM.DIST(110,4.6,0.2,TRUE) で計算できます。

関数形式の使い分け

  • TRUE(累積分布関数): 例えば、=LOGNORM.DIST(75, 70, 50, TRUE) は、「75以下の確率」を計算します。
  • FALSE(確率密度関数): 例えば、=LOGNORM.DIST(75, 70, 50, FALSE) は、「x=75における確率密度」を計算します。これは、75である確率そのものではなく、75付近の確率の密度を表します。

LOGNORM.DIST/LOGNORMDIST関数の注意点

  • x、平均、標準偏差は数値でなければなりません。
  • xは正の値でなければなりません。
  • 標準偏差は正の値でなければなりません。

まとめ

LOGNORM.DIST関数は、対数正規分布における確率を計算する際に非常に役立つ関数です。株価分析、生物学、工学など、様々な分野で活用できます。特に、データの分布が正に歪んでいる場合に有効です。この関数を理解し、適切に活用することで、データ分析の幅を広げることができるでしょう。最新のExcelを使用している場合は、LOGNORM.DIST関数を使用し、「関数形式」引数を活用することで、累積分布関数と確率密度関数の両方を計算できることを覚えておきましょう。

この解説で、LOGNORM.DIST/LOGNORMDIST関数について、より深く理解できたかと思います。この情報を活用し、Excelでのデータ分析をより効率的に行いましょう。

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