はじめに
Excelには様々な統計関数が用意されていますが、NORM.S.INV関数(および以前のNORMSINV関数)は、標準正規分布の逆関数を計算する際に非常に役立ちます。具体的には、「ある確率に対応するz値は何か?」という問いに答えることができます。これは、統計学における仮説検定や信頼区間の計算などで頻繁に使用されます。この記事では、NORM.S.INV関数の基本的な使い方から、画像にある例までを詳しく解説します。
標準正規分布とは?
標準正規分布は、正規分布の中でも特に重要な分布で、以下の特徴を持ちます。
- 平均 (μ): 0
- 標準偏差 (σ): 1
任意の正規分布は、標準化と呼ばれる変換を行うことで標準正規分布に変換することができます。このため、標準正規分布の性質を理解することは、一般的な正規分布を扱う上で非常に重要です。
NORM.S.INV関数とは?
NORM.S.INV関数は、指定された累積確率に対応する標準正規分布のz値を返します。これは、NORMSDIST関数の逆の操作を行います。以前のExcelバージョンではNORMSINV関数が使用されていましたが、現在はNORM.S.INVが推奨されています。
基本的な構文
Excel
=NORM.S.INV(確率)
各引数の意味は以下の通りです。
- 確率(必須): 求めたい累積確率を指定します。0から1の間の数値を指定します。
画像例の解説
画像では、以下の設定でNORM.S.INV関数を使用しています。
- 累積確率: セルA2に0.8が入力されています。
- 数式: セルB2には以下の数式が入力されています。
Excel
=NORM.S.INV(A2)
この数式を分解して解説します。
- A2: 累積確率(0.8)を指定しています。
数式の動作
この数式は、「標準正規分布において、累積確率が0.8に対応するz値」を計算します。結果として、セルB2には0.8416(約0.84)と表示されています。これは、標準正規分布において、z値が0.84以下の部分の面積が約80%であることを意味します。
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例:上位何パーセント?
例えば、テストの点数が標準正規分布に従うとします。ある生徒のz値が1.96だった場合、その生徒は上位何パーセントに位置するでしょうか?この場合、=1-NORM.S.DIST(1.96,TRUE)
(または =1-NORMSDIST(1.96)
) を計算することで、約0.025(2.5%)という結果が得られます。つまり、その生徒は上位2.5%に位置することになります。逆に、上位2.5%に入るz値を求める場合は、=NORM.S.INV(1-0.025)
または =NORM.S.INV(0.975)
で計算し、約1.96が得られます。
NORM.S.INV/NORMSINV関数の注意点
- 確率は0より大きく1より小さい数値でなければなりません。
- 引数に数値以外の値を指定すると、エラー値 #VALUE! が返されます。
古い関数NORMSINVについて
以前のバージョンのExcelでは、NORMSINV
という関数が使用されていましたが、これは互換性のために残されているだけで、最新のExcelではNORM.S.INV
を使用することが推奨されています。NORMSINV
とNORM.S.INV
の機能は基本的に同じです。
NORM.INV関数との違い
NORM.S.INV
関数は標準正規分布(平均0、標準偏差1)に特化していますが、NORM.INV
関数は任意の平均と標準偏差を持つ正規分布に対して逆関数を計算することができます。例えば、平均が50、標準偏差が10の正規分布において、累積確率が0.8に対応する値を求める場合は、=NORM.INV(0.8,50,10)
を使用します。
まとめ
NORM.S.INV関数は、標準正規分布における累積確率から対応するz値を簡単に計算できる非常に便利な関数です。統計学の分野だけでなく、データ分析を行う様々な分野で活用できます。この関数を理解し、適切に活用することで、データ分析の幅を広げることができるでしょう。
この解説で、NORM.S.INV/NORMSINV関数について、より深く理解できたかと思います。この情報を活用し、Excelでのデータ分析をより効率的に行いましょう。
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