このブログでは、ExcelのBINOM.INV
関数とCRITBINOM
関数について詳しく解説します。これらの関数は、二項分布において、累積確率が特定の基準値以下または以上になる成功回数を求めるために使用されます。
二項分布とは?(復習)
二項分布は、成功確率が一定の独立な試行を複数回行った場合に、成功する回数の確率分布を表します。例えば、コイン投げ、サイコロの特定の目が出る回数、製品検査での不良品数などが二項分布に従います。
BINOM.INV関数とは?
BINOM.INV
関数は、累積二項分布が指定された基準値以下になる最大の成功回数を返します。
BINOM.INV関数の構文
Excel
BINOM.INV(試行回数, 成功確率, 基準値)
各引数の意味は以下のとおりです。
- 試行回数(必須): 独立した試行の回数を指定します。正の整数である必要があります。
- 成功確率(必須): 各試行が成功する確率を指定します。0以上1以下の数値である必要があります。
- 基準値(必須): 累積確率の基準値を指定します。0以上1以下の数値である必要があります。
CRITBINOM関数とは?
CRITBINOM
関数は、累積二項分布が指定された基準値以上になる最小の成功回数を返します。
CRITBINOM関数の構文
Excel
CRITBINOM(試行回数, 成功確率, 基準値)
各引数の意味はBINOM.INV
関数と同じです。
BINOM.INV関数の使用例(画像に基づく例)
上記画像では、以下の設定でBINOM.INV
関数を使用しています。
- 試行回数: 50回 (セルA4に格納)
- 成功確率: 0.6 (セルB4に格納)
- 基準値: 0.5 (50%)
画像に示されている数式は以下のとおりです。
Excel
=BINOM.INV(A4, B4, 0.5)
この数式は、「50回の試行で、成功確率が0.6の場合に、累積確率が50%以下になる最大の成功回数」を計算します。結果は30となります。つまり、30回以下の成功で、累積確率が50%以下になるということです。
具体例:
例えば、あるバスケットボール選手がフリースローを打つ確率が60%だとします。50回フリースローを打つとき、成功回数が30回以下になる確率は50%以下です。
Excelサンプルデータのダウンロード
上記画像のエクセルサンプルデータを、以下のリンクからダウンロードできますので、練習用として活用ください。
【Excel】練習用サンプルデータ(例題)をダウンロード(無料)
CRITBINOM関数の使用例
同じ条件でCRITBINOM
関数を使用するとどうなるでしょうか。
Excel
=CRITBINOM(A4, B4, 0.5)
この数式は、「50回の試行で、成功確率が0.6の場合に、累積確率が50%以上になる最小の成功回数」を計算します。結果は31となります。つまり、31回以上の成功で、累積確率が50%以上になるということです。
BINOM.INVとCRITBINOMの違い
BINOM.INV
は「累積確率が基準値以下になる最大の成功回数」を求め、CRITBINOM
は「累積確率が基準値以上になる最小の成功回数」を求めます。この違いをしっかりと理解することが重要です。
具体的な使い分け
- BINOM.INV: 「ある確率以下に抑えたい」場合に使う。例:「不良品発生率を10%以下に抑えるには、最大何個まで不良品を許容できるか?」
- CRITBINOM: 「ある確率以上にしたい」場合に使う。例:「90%以上の確率で目標を達成するには、最低何回試行する必要があるか?」
注意点
- 引数に数値以外の値を指定すると、エラー値
#VALUE!
が返されます。 - 試行回数が0未満の場合、エラー値
#NUM!
が返されます。 - 成功確率または基準値が0未満または1より大きい場合、エラー値
#NUM!
が返されます。
関連関数(復習)
BINOM.DIST
BINOM.DIST
関数は、特定の回数ちょうど成功する確率、またはそれ以下の回数成功する累積確率を計算します。
BINOM.DIST(成功数, 試行回数, 成功確率, FALSE)
: ちょうど指定された回数成功する確率(確率質量関数)BINOM.DIST(成功数, 試行回数, 成功確率, TRUE)
: 指定された回数以下成功する累積確率(累積分布関数)
BINOM.DIST.RANGE
BINOM.DIST.RANGE
関数は、指定された範囲の成功回数における確率の合計を計算します。
構文:BINOM.DIST.RANGE(試行回数, 成功確率, 成功数1, [成功数2])
N.DIST
N.DIST
関数は、正規分布の確率密度関数または累積分布関数を計算します。試行回数が非常に大きい場合、二項分布は正規分布で近似できるため、N.DIST
関数が役立つ場合があります。
構文:N.DIST(x, 平均, 標準偏差, 累積)
まとめ
BINOM.INV
関数とCRITBINOM
関数は、二項分布において累積確率に基づいて成功回数を求めるための重要なツールです。それぞれの関数の違いを理解し、適切な場面で使い分けることで、より高度な分析が可能になります。このブログで紹介した関連関数と合わせて活用することで、二項分布の分析がより深く行えるはずです。
コメント